写真は、東洋経済オンラインHPより
<この記事は2102字です>
インテリア業界では、大塚家具の動向を注視しています。
人口の減少、住宅着工件数の減少、などの経営環境が変化する中で、家具の販売店がどのような形で変化していくかは大きな課題です。
そんな中、大塚家具は、お家騒動に端を発して窮地に追い込まれまれています。
そのため、業界では答えが見えていない家具専門店は、今後どのように変化すべきか?という難問を、どこよりも早く解かなくてはならないのです。
そんな、状況を踏まえて、インテリア業界に身をおく私が業界目線で、つづってみたいと思います。
結論、復活は難しいでしょう
今回の記者会見を全編見たうえでの私の結論ですが、大塚家具の復活はないと思います。その理由は下記のとおりです。
理由1:家具と家電はその製品の特性が違う
なんだか、事例Ⅱ風ではありますが、家具と電気製品はそれらの製品特性が違います。「家電」として、ひとくくりにされますが、売り方は全く違うのです。
家電は、その製品が持つ性能をベースに説明をします。テレビであれば、4Kや録画機能、省エネなどです。とくに省エネ性能などは重要視されるのではないでしょうか?
各社の製品には、いろいろな特徴はありますが、それは性能や機能の良しあしとなります。つまり、この機能がありこれだけの性能があります、それでこの価格、いかがでしょうか?という事です。
一方、家具は全く異なります。家具という製品は、性能良しあしはあまりありません。椅子であれば座る、テーブルであれば食事ができる、棚であれば収納ができる、をクリアしていれば成り立ちます。座るや収納できるには、それ以上の付加価値はありません。(座り心地という事はありますが、これは個人差がありますので性能というよりも好みですね)
性能のみで評価すれば、ホームセンターの家具と高級家具には差がないのです。では、何が違うかというと、デザインです。
家具は、デザインを語らなくてはなりません。家具単体のデザイン、部屋においたときにの部屋全体のデザイン、時にはカーテンや小物などについても語る事が必要となるでしょう。
それを説明する為に、家具の展示はデザインをイメージしやすいように部屋の形で展示します。大塚家具もそうなっていますね。
このような違いがある製品を同じ売り場で見せることは、難しいと思います。電気製品を見せる展示、インテリアデザインを見せる展示ではあまりに違いがおおきすぎて両立はできないのです。
また、店員の接客についても同様です。膨大な、両方の商品知識を持つのは難しいでしょう。
理由2:家具の好みは多様
近年、インテリアへの関心が高まりつつあります。テレビでもタレントのリフォーム特集などよく組まれています。
ユーザーの関心が高まることで、ニーズの多様化が進んでいます。まあ、あたりまえですね。つまり、大塚家具のような大規模の家具店であれば、高級というくくりではなく、デザインのテイスト(モダン、クラッシック、ヨーロッパスタイル、和風、北欧、などなど)全てをカバーしなくてはなりません。
それらの品ぞろえを1企業で用意し、多様な顧客ニーズに対応するのは難しいのです。
記者会見で製品ラインナップを、中クラスから高級クラスまで広げるような発言がありましたが、それこそ難しいといえます。
山田会長の家電を含めたワンストップサービスの提供といわれていましたが、そもそも難しいのです。
理由3:粗利は下がる
ヤマダ電機山田会長が、力強く大塚家具の粗利率が高いことを言及されました。利益率の高い製品は、売り上げが上がればより大きく会社の利益は改善するといった趣旨です。
しかし、理由2言いましたが、製品ラインナップを中クラスまで広げますので、当然ですが、利益率は下がります。中クラスの製品は競合が多く、価格は下げざるを得ませんので。
また、法人需要を強化とありますが、これこそ粗利率が下がります。法人需要の事を家具業界では、コントラクトといいます。コントラクト家具とは、ホテルや商業施設向けの家具のことで、どの案件も入札となります。当然入札は安い企業が落札しますので、価格を下げざるを得ず、利益率は下がります。
つまり、今の売上構成では粗利率が高いが、今後力を入れる分野は粗利が取れないので、今後は粗利率が下がるという事です。高粗利なので売り上げが少し伸びれば、会社の利益率が回復するという考えは、間違っていますね。
まとめ
他にもいろいろと突っ込みどころがありますが、記者会見を見た感想としては、現実を見ていないな、と感じました。
記者会見で、3年後に40億円の営業利益を達成するといっていましたが、現在50億円赤字なので、90億円利益を増加させなくてはなりません。粗利率50%として180億円近く売上高を増加させてなくてはなりません。ここ数年で売上を上げるどころか、下がってきている状況で、ヤマダ電機との謎シナジーでこれを達成するのは大変困難な状況です。完全に絵空事です。さらに、経営陣はそのままということも??です。
今後も目が離せませんね。