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実務補習とは
中小企業診断協会HPには下記の様な説明があります。
中小企業診断士第2次試験に合格後、3年以内に実務補習を15日以上受けるか、診断実務に15日以上従事することにより、中小企業診断士としての登録を行うことができます。
これだけの説明ではよくわからないですね。実は、実務補習については協会HPでは詳しく紹介していません。たぶん教官の指導方針により内容が変わったりするので一概に説明できないのではないかと思います。要するに、よくわからないのです。私は、よくわかってない中で実務補習を受けることになりました。今思えばもっと真剣に下準備をしたうえで受講すればよかったと後悔しています。
これから受講する方にむけて少しでもお役に立てるよう説明したいと思います。
実務補習の種類
実務補習は、5日間を1クールとして3回受ける必要があります。その受講の仕方ですが、3回連続で実施する15日コースと1回づつ実施する5日コースの2種類あります。
15日コースは、年一回で2月に実施、
5日コースは、年3回で15日コースと同じ2月、5日コースのみで7月、9月、に実施されます。
私は早く診断士になりたいと思い、15日コースを受講しました。
15日コースといっても15日で終わるわけではありません。期間としては2月初旬~3月下旬までの約40日間の長丁場となります。1クールだいたい13日間ということになりますね。そのうち終日拘束されるのが5日となります。
15日コースと5日コースどちらがいいのか?
15日コースと5日コースのメリットデメリットは下記の通りです。
15日コースのメリット
- 早く中小企業診断士として登録できる(試験後最速)
- 3クール同じメンバーで実施できる為、実施メンバーと強い絆ができる
- 独立を目指すなど意識が高い方が多い
15日コースのデメリット
- 受講期間の40日は終日拘束される5日以外にも自主作業(資料作成)が必要なため、仕事が忙しいと対応が難しい(年度末が忙しい仕事の方は難しい)
- 約15万円の費用が必要となる(1クール約5万円)
- サラリーマンの場合会社の理解がないと受講は難しい
5日コースのメリット
- 13日程度の期間で実施されるため、スケジュール調整がしやすい
- 費用が約5万で済む
- 中小企業診断士は5年更新ですが、その手続きに手間がかかります。3年以内に3回受講すればいいので更新期間を伸ばすことができる。年に1回づつ受講していけば、最初の更新は8年後となりますね。
- 次の受講まで時間があるので、自分自身の準備が可能
5コースのデメリット
- 中小企業診断士としての登録が遅れる
- 即診断士として活躍したいと考える方は少ないので、企業内診断士になる方が多い(メリットとも考えられるけど)
簡単ですがこんなところでしょうか?
実務補習の内容
実務補習の内容について説明します。あくまで私の場合ですのでご了承ください。
簡単に言いますと、リアルなコンサルティングです。
実際に企業にお伺いをして、社長や幹部社員、スタッフなどからヒアリングを行いその企業の課題や問題点を見つけます。その後、財務分析、市場調査、現場調査などを実施して、改善策を提示します。
訪問企業は、実務補習の担当指導員(プロのコンサルティング)が選定しているようです。たぶん、指導員の顧客かと思われます。よって、実務補習にふさわしい問題(程よい問題?)をかかえた企業を選定していると思います。
実務補習のメンバーは、私の場合5名でした。企業経営者、士業者、銀行系シンクタンク、大手企業勤務者、中小企業勤務者の私、の計5名です。30代の女性が1名で後は40代男性でした。診断士には女性がとても少ないので男性だけのグループも多かったと思います。
実務補習の開始
実務補修の初日、指定された場所に実務補習を受講する方全員と指導員の先生、協会の方が集まり簡単な式典が行われます。
その後、メンバーと指導員とのあいさつがあり、いきなり企業に訪問します。その企業についての情報などはその場で伝えられますので事前の準備は全くできません。
また、出発までの短い時間で、本案件での役割を決めなくてはなりません。
①リーダー ②財務 ③その他
実務補習では、リーダーと財務が重要な役割となります。リーダーは診断レポートのストーリを考えたり、ミーティングの中心となりメンバーを導く必要があります。財務は、その企業の財務分析を担当します。その情報をもとに課題をあぶりだしますので重要な役割です。
その他は、ヒアリングをした後企業の持つ課題に合わせた役割を担います。例えば、小売店で展示効率化が課題であれば、店舗内分析や売れ筋商品分析などです。
初めてのヒアリング
AM9:00に初めて会ったメンバーと役割を決めただけの状態で企業へ訪問します。そして、いきなり社長との面談です。私は、何もわからない中でリーダーを引き受けました、いわゆる名ばかりリーダーです。私が中心となりヒアリングを進めなければならない状況に追い込まれます。あまりの緊張で、正直何を話したのか記憶がありません。メモは当然とりますので(全員がとってくれていたので突合せをして怪しい部分は修正できました)なんとかなりました。
サラリーマンの私がいきなりその企業の社長と話をして、課題を見出すというのはかなり難しい作業となります。まあ、指導員の先生やほかのメンバーもいますので、そこは何とかなりますが。
そしてミーティング
ヒアリングで得た情報をもって、顔合わせをした会場に戻ります。そこで、指導員の先生からどのように実務をすすめるかの指導があります。まわりを見ますと他のグループも戻ってきて、打ち合わせが開始され会場は熱気に包まれます。そこには、遊びのような軽い空気はなく、みなさん真剣な目に変わっています。
いよいよここからスタートとなります。
実務補習期間の過ごし方
日程としては、下記のようになります。
初日 金曜日 終日拘束
2日目 土曜日 終日拘束
3日目 月曜日 各自作業
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7日目 金曜日 各自作業
8日目 土曜日 終日拘束
9日目 日曜日 終日拘束
10日目 月曜日 終日拘束 (資料提出、発表)
5日間拘束されますが、土日が絡む為、土日休みの企業に勤めている方なら2日休むだけで済みますね。
ただし、初日に社長からのヒアリングをして、10日後に約100ページ程度の資料を作成し発表するということになります。これは結構大変です。
私の場合は、平日の各自作業にものすごく時間をかけました。正直あまりよくないですが、仕事中にも資料を作成していました。家に帰ってからも深夜1~2時ぐらいまで作業し、7日目には久しぶりのカンテツ(完全な徹夜)もしました。
資料作成の中で、再度ヒアリングが必要になることもありましたので仕事を抜け出し企業に伺うこともありました。
そうです、実は終日拘束の日の方が仕事がない分楽なのです。
当時は何とかしなければならないとの思いで必死になりました。今思えばその必死さがとても大事だと思います。企業への報告資料は事務的なものではなく我々の思いを注入します。したがって、必死に少しでも詰め込もうとしますので、どうしてもぎりぎりになってしまうのです。
小説家が締め切りぎりぎりになってしまうのに似ているのでしょうか?
これから、実務補習を受ける方はそのあたりを覚悟した方がいいかと思います。
しかし、最終報告の終わった後のビールがめちゃくちゃ旨いですよ。それを楽しみにしてください。
実務補習の感想
サラリーマンとして長く勤めていますと、当然会社の仕事はできるようになります。また、年齢を重ねると失敗を恐れるようになります。そうなると、自分の殻を破って挑戦することがほぼなくなります。
その意味でこの経験は、とても貴重で、他では得られないものを得られたとおもいます。恥もかきましたし、うれしくてはしゃいだり、感動することもありました。密度の濃い40日間でした。
また、企業に訪問しますと相手は私たちのことをコンサルタントとして迎えてくれます。少しこそばゆく感じます、責任感も感じます。そこには自分が所属する”会社”という後ろ盾もないので、不安な気持ちにもなります。
いかに自分が”サラリーマン”になっしまっているかを思い知ることもできました。
まとめ
私はサラリーマンですが、会社の理解もあり15日コースを受講することができました。いままで沢山の診断士の方とお会いした中で思いますが、皆さん口をそろえて、15日を受けたかったといいます。
実務補習は、数名のチームで進めていきますが、約40日間結構大変な思いをますので仲間の絆が深まります。また、独立を考えている方やすでに税理士や社労士などの士業で独立している方が多いので刺激を受けます。
私はその仲間とは4年たった今でも付き合いがあります。将来独立を考えるような計画がある方は特に15日コースをお勧めしますね。結構大変ですが。
おまけ
一点だけ受講前にアドバイスですが、資料作成にはWordをつかいますので苦手な方は勉強したほうが良いと思います。